奥秩父・荒沢谷〜雲取山 2018.9
西武秩父駅から三峰神社方面のバスに乗り、自由乗降区間で降りました。スタートは、林道をひたすら歩くことになります。凡そ2時間半、しとしとと小雨が降ったりやんだり。静かな秩父の山は小雨がとっても気持ちいい。アルプスの抜けるような景色もいいですが、湿気に包まれた山も気持ちを溶かしてくれて気持ちいい。山に溶け込んでいく自分を感じながら、黙々と歩きます。
荒沢橋から入渓。ザーッと沢の流れる音がして、いよいよと気持ちが高鳴ります。
「あれ?今日は水が多いね。」
「滝が少ない沢だから大丈夫だよね?」
「水が冷たそう!」
みんな思い思いの感想を言っている。
僕は、少しどきどき。大丈夫かなぁ。水が多いなぁ。
入渓すると沢は巨大アクティブティ。わくわくどきどき。幸い天気は少し回復し、頭の上まで木々の緑が覆っています。
「いてぇ、滑った!」
「なにここ、どっちに行くの?」
「いや、そっちよりこっちが簡単じゃない?」
「そのザッグ何入ってるの?重そう!」
「この間のネパール料理のお店、美味しかったね。」
「うわぁ、ここ怖いぃ〜。」
みんな勝手なこと言って、おしゃべりが止まらない。
こっちかな?あっちかな?ベストルートが分からずに右往左往。後ろの人が簡単なルートを見つけて歩くって、あるあるだなぁと思います。前を歩いていると、後ろからもっと楽なルートを歩く人に気づいて、そうかぁシマッタといつも反省します。
うーん、歩くのヘタだなぁといつものように思い、それでもよいしょよいしょと進みます。岩から岩へポンポンと飛んでいければいいんだけど、なかなかうまくいかない。去年からの課題だなぁ。去年は本当に怖かったけど、少しは歩けるようになったかな?今年は何回沢に行ったっけ?
今日は虫が鳴いていない。ザーッという沢の音だけ。不思議だなぁ、今日は虫がいないのかなぁ。どこにいるんだろう。木の葉の下でお休みだろうか。虫には虫の生活があって、今日はお休み。ガサゴスガサゴソ、虫もきっと葉っぱの下で休んでいるのですね。
僕も今日は心の休憩。思いっきり沢に浸って、一日遊ぼう。
ベンガラの滝
ゴルジュに入って
ゴルジュを抜けると今日の泊まり場はもうすぐ
テン場についたら、薪拾い。焚火が一番楽しい。なんにもしないで一日焚火を見ていてもいいんだけどなぁ。
「あれ?もう火がついたんですか?」
「えっ!カレーって本格的に作るんですね。」
「あっ、いい匂い。」
「ねーっ、もうお酒飲んでもいい?」
「つまみあるよ。」
ぱちぱちぱちっ、もう焚火がささやいてくる。
どうして山で食べるご飯はこんなにおいしいんだろう。
体動かしたから?
いやいやそんな簡単な話じゃないよね。
汗かいたから?
汗もかいたけどそれだけじゃないと思う。
みんなと食べるから?
そうだね、それが一番楽しいね。
自然の中で食べるから?
そう、原始の頃からヒトは、こうやって自然の中で生きてきた。自然の中というより、虫や犬や鹿と一緒で、ヒトは自然の一部だったから。もう一度、自分は自然の一部で、今は山の一部になっているのを感じたい。
晩ご飯はグリーンカレーです
焚き火のナス焼きは旨いぞ
夜も更けるとみんなの口数も減ってきた。
ぱちぱちぱちっと焚火の音。ざーっと沢の音。うーん、これに虫の声が欲しかったなぁ。これは次の楽しみに取っておこう。今年最後の焚火かな?もう一回くらい行きたいな。
少し薪を足したいな。うまく火が移るかな。そーっと薪を置いて、火が元気になるかな?じっと火を見つめながら焼酎をひとなめ。風が吹くと少し気持ちいい。ぱちぱちぱちっ。
やっぱり焚火には焼酎が一番合う。大先輩のブログにも「焚火と焼酎」って書かれてたっけ。そろそろ眠くなりました。また、明日。おやすみなさい。
2日目
朝の山は好きです。真っ暗なうちに起きだして、山も眠っています。焚火も昨日の仕事を終えて眠っています。あれ?残り火があるよ。少し火を足そうか。ぱちぱちぱちっ。
山全体が眠っているのに、沢だけは律儀にザーッて働いている。そうか、今日ももうひと遊び。今日で山遊びも終わっちゃうんだなぁ。
すこーしづつ明るくなって、稜線のラインが見え始めるころがいい。山もだんだん起きてきて、今日も元気と力が湧いてきます。みんなも眠そうな顔して起きてきた。最終チームは何時まで飲んだんだろう?今日は晴れるか
朝ご飯はパスタです
ボトンボトンと落ちてくる栃の実
みんなで写真を撮って、さぁ頑張ろうっと気合いを入れて沢に入ります。今日は長いよ、頑張れるかな?光がピカピカ、風がそよそよ気持ちいい。あの木は何かな?サワグルミ?緑がきれい。緑を透かすように陽の光がはいってくる。この緑って世界で一番きれいな緑だと思う。これを見たくて沢に来るんだなぁ。秋の紅葉もいいよなぁ。もう一度来たい。冷たい水の中を歩かない沢に行こう。うーん、楽しみ。
栃の巨木の前で
「あれれ?このゴルジュどうやって行くの?」
「泳いで、滝を越せない?」
「ムリムリ、あんな水量じゃぁ、登って行けないよ。」
「ここ巻けないの?」
「上が越せないよ!」
「何とかなるんじゃない?」
「掴むそばから、岩が崩れちゃうから。」
沢は決まりがないからいいね。こっちを行けなければ、あっち。あっちを行けなければ巻いちゃえばいい。ロープに引っ張られて、慣れないメンバーは大変そう。きっと怖いんだろうなぁ。僕も去年は怖かった。だんだん平気になるんだよね。
あとはきつい山登り。よいしょよいしょ。汗が噴き出してくる。山の木々が癒してくれます。みんな強いなぁ。ちょっと待ってよ。原始のままの森が残る、こんな尾根が大好き。植林されちゃうと山はさみしくなっちゃうから。
「やっと稜線に出たよ。」
「こっちが小屋だよね?」
「疲れたぁ。」
「もっと手前の道のところで待ってないとダメじゃない!」
「えっ?あれって巻き道だったの?作業道かと思った。」
「ダメだ。もう登りたくない。」
「あとちょっと、あとちょっと。」
「出たぁ、やまづとあるある。恐怖のあとちょっと。」
「着いたぁ!」って、頂上に来るとホッとしませんか?好きで山に来ているのに、もう登らなくていいってホッとする。不思議だなぁと毎回思う。天気がいいと頂上はきれい。富士山が見えると幸せな気分になるのは、僕だけじゃない気がするんだけど。
あとはひたすら下るだけ。こんなに歩いたのは初めてかな。気持ちよかったから、下りになるともっと歩きたくなる。暗くなっちゃったな。暗くなっても山を歩くのは初めて。一人じゃ心細かったな。みんなで良かった。
バス停には、達成感とちょっとの疲労を抱えた人たちがたむろしていた。みんな楽しかったんだね。充実感いっぱいの顔があっちにもこっちにも。僕たちも良く歩いた。楽しかったね。また、明日から現実の世界に戻って頑張ろう。
みんなありがとう。