奥秩父・釜の沢東俣~甲武信岳 2023.10 やまづと

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2023年山行一覧
甲武信岳2475m
甲州、武州、信州にまたがるピークで記念撮影。
登ってきた渓谷を上から望むと、深い自然に抱かれていたことを実感して、ここに至るまでの全ての瞬間が愛おしくなる。

雪、Yさんが喜ぶ姿を見て、こちらも嬉しくなる。

ムードメーカーのN村さん
気配り目配り手配り口配りに、何度も助けられる。
後方で微笑むSさんは誇り高き山屋、知識経験が豊富な頼れる存在。

コシアブラの落葉
Sさんの真似をして茎の部分を齧ると、タラの芽に似た香りと味がする。来春は新芽を天ぷらで食べたい。
あと少しでポンプ小屋
急な傾斜に萎えそうになる中、Yさんの鼓舞激励が有り難い。ヨォッシャァアー、もうすぐ水源じゃー!
明けの明星 金星
昨晩の煌々と照る月の左下に見えていたのは木星でした

2日目

ピーマン鍋
味噌味の豚汁に数種類のキノコとナス、ピーマンを使う滋味、Sさん自慢のメニュー。
鍋一杯の量をあっという間に平らげた。
千畳のナメ
滑らかな水の流れ、明るく開放的な雰囲気に心踊り、寝転がって足元の造りを確認したい衝動に駆られる。
童心に返りたい人におすすめだ。
見事な体幹のYさん
明るく統率力があり、企画実行判断力、想像力が抜群。
西のナメ沢10m
紅葉に隠れた横に広がりのある滑り台だ。
入水最高値地点
冷たいのは嫌だ、濡れたくない、滑りたくないという思いが強すぎて、かえって胸まで浸かる羽目に陥る。
N坂さんの一言で「沢登りは濡れる前提」だということを思い出す。

1日目

白い一枚岩の滝300m
展望良く、自分が峡谷を通って遡上していることを実感する。
ゴーロ先、右俣に見える川筋が「東のナメ沢」
乙女の滝50m
ザックを置いて腰を下ろし、ゆったりと景色を愉しむ。
別格な印象のアプローチ
1ヶ月前から準備を開始したのにもかかわらず、初めての泊沢はザックの重さも格別に感じる。
水のある景色が好きだ。

2022年12月、沢登りがしたくて「やまづと」の仲間に入れてもらった。
例会でSさんに「体力がなければ沢登りはできない」と耳の痛いことを言われた。
悔しいので、次のシーズンまでになんとかしようと山に通った。

2023年3月、良い調子になってきたところでアクシデントに遭い、救急車で運ばれて死にかけた。
「晴天の霹靂」は日常にも転がっているのを忘れていた。
「九死に一生を得た」ことで、自分の中の価値観が大転換した。
沢登りをしておかないと、死んでも死にきれないと思った。

7月、Sさん、Yさん、Iさん、Kさん達が新人のために買い出しツアーを企画してくれた。
必要なギアの説明を聞きながら、シャワークライミングを想像して口元が緩んだ。
それから三ヶ月で6回を数える沢登り、沢歩きができたことに感謝と充足感。
大袈裟ではなく、生きていてよかった。

10月、今季の沢は終わりかと思っていたところ、Sさんが「泊り沢」を企画してくれた。
初めて沢の本を購入した4年前には、日帰りまでしか想定していなかった。
一人では想像もしなかった未知の世界へ、グングン引き込んでくれる仲間がいてくれるのが有り難い。
装備不足、日程調整、家族了承、体力不安、帳尻は後で合わせることにして、即答で参加を希望した。

Sさんが出してくれた山行計画、地図を元に想像を膨らませて準備を始める。
頼りにしていた同期のOさんは怪我で断念、自分以外は猛者ばかりになった。
経験値を高める目的に絞って「初めての泊沢体験」をすることにした。
荷物の準備に難儀することも、山行中不便があろうことも全て受け入れ「敗北主義」で臨むことにした。

28日の朝、集合前に身支度をしたいと思い、少し早く塩山駅に到着した。
ロータリーにはYさんの車が停まっていた。運転席の彼は、早朝にも関わらず起きている。
N坂さん、Sさん、N村さんが来て、5名全員集合。
道の駅みとみへ向けて出発した。

Yさんとの山行では、下山後温泉に行けるのが嬉しい。
事前のメールに「車出すので温泉道具は車に置いていけます」という有り難いお言葉。
道の駅から歩き出すと、YさんとN坂さんが今季の沢へ何度行ったかという話になった。
二人は25前後の数字で拮抗してしているそうだ。

それから、今回参加予定だったOさんは北アルプスへ行くのが夢だったようで、三ヶ月で実現してしまったそうだ。
7月の買い物ツアーで、大きなザックに重りを入れて背負い「これにします!」と言っていたのを思い出す。
Sさんは昨年の沢で怪我をして現在もリハビリ中。その話を聞いても、自分にはピンと来ないような良い動きをしている。
N村さんからは、以前沢でご一緒した息子さんの近況を教えてもらい、元気でいることに安堵する。

山の仲間は不思議な存在だと思う。
そして、他の団体は知らないけれど、やまづとには多種多様な人がいるのが好きだ。
やまづと(山苞:山から持ち帰るみやげ。山里のみやげ)という名前もチャーミングだと思う。
5年後、10年後、30年後、やまづとはどう変わっていくのか、その時自分は何ができるのか。。。

しばらく続く下りでは会話思考する余裕もあったけれど、装備を着けてからは修行専一だ。
荷物に耐えて、できるだけ遅れないように、滑らないように転ばないように、冷たくならないように濡れないように。。。
砂がつくと、岩場で滑る。荷物の大きさが気になって、岩場の移動がバランスよくできないのでは。。
上りでは息が上がって苦しい。。。

N村さんが前を行く時、距離が開きすぎないように常に気を配り、優しく声をかけ続けてくれる。
N坂さんが後ろから来てくれる時には、ふわりと後押ししてくれる。
しんがりを務めてくれるSさんは、足運びなどのコツを教えてくれる。
先頭を行くYさんはベストなタイミングで奮起を促してくれる。

暗くなり始めた頃「極上物件」にて幕営開始。
明朝まで使用する分量の薪を拾う仕事、タープを張る仕事に分かれる。
落ち着いたところで、靴を履き替え防寒着を着けて荷物整理。
火熾し、夕食の準備。

水場の近くで焚き火をすることは、炊事用水を汲みやすいだけでなく、翌日の後始末をする上でも重要だ。
Sさんは、原状回復を心がけていることをさりげなく教えてくれた。
夜は風上になるはずの山側に座っていたN村さん、呼吸も視界も失う程の煙に襲われていた。
Sさんが「焚き火の煙は、美男美女の方にいく」と言っていた。

N村さんおすすめの「ボンベイサファイヤ・カルピス」口にしなかったのを今も後悔している。
いいちこと「ちゃんぽん」になるのが不安だったのだ。
同じ理由で、N坂さんの日本酒も断っている。
お酒の強い人が羨ましい。

22時頃お開き、就寝。
Yさんがセッティングしてくれたタープは、向き、角度、高さが絶妙で、驚くほど快適だった。
初めてのタープ泊、嬉しくてなかなか寝付けないかと思ったけれど、誰かの寝息を聞いているうちに、フワフワしてきて入眠。朝までグッスリだった。

翌29日、5時にYさんの声掛けで起床。
先に起きて火を熾し、朝食の準備もしてくれている。
猛者たちは朝の準備もシュラフの片付けも手早く済ませる。
自分はもたもたしているけれどauもあり、快調。

優雅な朝の時間を過ごし、身も心も温まったところで出発準備。
濡れたウエア、靴下、靴を着用し、無言の行。
急な上りが表情を変えて次々現れる。
Sさんが試行錯誤しながら、不自由な足を運んでいる様子に「自分も負けずに頑張ろう」と、勇気をもらう。

N村さんは、ポンプ小屋までペースやルートを合わせてくれた。
Sさんは水源の水をボトルに汲んで美味しそうに飲んでいた。
N坂さんは最後のツメも軽やかに上っていた。
Yさんは甲武信小屋前のベンチで装備解除と休憩、荷物をデポして甲武信岳頂上に向かうと教えてくれた。

Yさんの発声でダッシュしたけれど、2mでこときれた。
N坂さんはあっという間に、見えないところまで行ってしまった。
遅い自分が申し訳なくて、先に行って欲しいと伝えた。
Yさんは「来るまで待っているよ」と言ってくれた。

ようやく皆に追いついて、歩いて来た谷の景色を望んだ。
「隠された、上からは見えないところを登ってきたんだ」と思った。
頂上までは全員一緒に歩いた。
標高2475mあるので、さすがに寒かった。

下りではYさんの後ろを歩かせてもらった。
走るように下っていた。
バランスを取るためには一定のスピードでリズミカルに動くのが良いように思った。
写経を思い出した。

Sさんは植物を楽しみながら下りていた。
N村さんは動物を楽しみながら下りていた。
N坂さんはお喋りを楽しみながら下りていた。
Yさんは修行を楽しみながら下りていた。

振り返ると、最初から最後まで「お荷物が荷物を背負って動いている」ような存在だった。
でも、誰もそれを責めることもなく、それぞれのスタイルで励まし応援し、助け、導いてくれた。
初心者の自分を下に見ることもなく、仲間として接してくれた。
皆さまのおかげで、これからの課題、改善策、夢や希望などが見えてきたように思う。感謝しかありません。

来年は3月から11月までの九ヶ月間で20回は行きたい!
行けば行くほど好きになる。
知れば知るほどハマっていく。
沢ヤッベェー、マジ最高。
軽快な身のこなしのN坂さん
あらゆる場面で軽やかにそして素早く動く姿は、見ているだけで心地良い。
濡れ装備
冷たい装備品に言葉を失い、寡黙にスタートする。
足元は原始的で荒々しい伏流、見上げると優雅で目映い紅葉が広がる。
極上の物件
安全面は当然のことながら、水場からの距離、薪の豊富さ、平坦な地面など、野営地を決める基準は様々だ。
秀逸なタープ設営のおかげで、安心して快適な一晩を過ごした。
朝食
N坂さんが煙と格闘して作ってくれた「茗荷入りウインナーソテー」と、Yさんこだわりの「炊きたてご飯のお茶漬け」
茗荷のスッキリとした香りと食感がウインナーに合う。お茶漬けはサラサラと食べやすく、すぐに体が温まる。
月光
昨晩は十三夜、明晩は満月、今宵は未完のほぼ満月。
縁起よし、明るさよし、天気よし。
炊飯
重い米を持参して炊いてくれるYさんに驚嘆する。
焚き火
薪を拾い、火を熾し、体を温め、食事を摂る。
旬の炭火料理を囲んで、ミニマムな人間の営みを心底味わう。
両門の滝30m
東西二俣が出合う地点で記念撮影。
釜の中、赤青黄色とりどりの葉が寄せ集まっている様は、上質な生和菓子を彷彿させる。
(魚留めの滝上)厳重注意
万が一滑ろうものなら、数十メートル、数百メートル先までノンストップで滑落する危険性がある。
(釜の沢出合?)スラブ登攀
一見使えそうにない小さな凹凸もホールドになり得る。
白い岩床とエメラルドグリーンの水
甘美な雰囲気に癒されつつ、冷たい現実と闘う。
ダイナミックな自然美
あの「ハーフドーム」と同じ花崗岩。あなたならどう表現して、誰に何を伝えますか?
美しい紅葉
無駄な荷物下手なパッキングをひたすら反省、景色を楽しむ余裕なく黙々と歩を進める。
千畳のナメを歩く
朝の焚き火
暖かくてうれしい。