最強最長寒波の中、赤岳へ。
寒波を心配し、ソンシーさんが計画を練り直してくれました。小屋の方とも連絡をとり、万全の準備が整いました。当日の朝の状況次第で、その日の行程が決まります。
当日、やっぱり寒波だし、今日は行者小屋でテントかなと思いながら電車に揺られていると、決行しますの連絡。展望荘まで行くとのこと。あー、テントで食べようと思っていた辛ラーメンはお預けだ…。
一足先に茅野駅に着き、ロッカーを確認。全部空いている。懸命にパッキングしたテント装備と楽しみにしていた辛ラーメンをロッカーへ放り込み、ザックの中を整えます。あずさが到着すると、改札からザックを背負った大人たちがダッシュで出てきます。数人が目の前を通り過ぎ、コーダさん到着。急いでロッカーへ荷物を入れます。その後、ソンシーさんが息を切らして到着。前日にピイマンさんから受け取ったテントも用なしです。3人でバス停まで走ります。何とか座ってバスが出発。
美濃戸口に着くと、さすがに寒い。全部着こんでいたいけど、これから長い林道歩き。悩んだ末にダウンは脱いで出発しました。車が踏み締めた雪道を転ばないように歩きます。ツルツルにはなっておらず、それなりに快適。1時間歩くと、いくつかの小屋と駐車場のところに着きました。「スンドゥブ1200円」の貼り紙。あー、辛ラーメン食べたかったな…。
一休憩し、いよいよ山道へ。ツボ足で快適に歩きます。途中、下山してくる人たち全てにソンシーさんが話しかけます。「どちらまで行かれましたか?」「上はどうでしたか?」「風は?」…その返答は…「ラッセル疲れて行者小屋で引き返しました」「地蔵尾根もラッセルでした、結構深いですよ」「サラサラでアイゼン刺さらなくて諦めました」「今日上まで行くんですか!…………。気を付けてください…。」……サラサラなのか深いのか、上はどうなっているのかよく分からなくなる。まあ、行ってみるしかない。行って帰ってきた人もいる。そう思って歩き続けること2時間半弱、ようやく行者小屋に到着です。
ここで一休憩。止まるととても寒い。インナー手袋だけではすぐに指先が痛くなります。観念してアウター手袋を装着してアイゼンを履きます。少しだけ飲み食いして、出発です。ソンシーさんが少し偵察しています。「踏み跡あるね」とのこと。ワカンは必要なさそう。
私にとっては初めての冬の赤岳、初めての地蔵尾根です。ちょっと緊張しながら歩き始めます。踏み跡がしっかりあり、快適に登って行きます。雪山初心者の私には、雪質がどうとかはよく分かりませんが、まあ歩きやすかったです。鎖場では、鎖が見えており、怖がりの私はしっかり鎖のお世話になりました。ややトラバース気味に進む箇所は少し緊張しましたが、ここでも鎖のお世話になりました。上の方へ進むと徐々に岩も出てきますが、慎重にクリアし、稜線へ出ました。尾根を進んでいる間は晴れ間もあり、景色も楽しめました。
初めての地蔵尾根、アイゼンやピッケルを正しく使って登らねば…と緊張していたのですが、それ以上に緊張するできごとがひとつ。何やら登り初めからソンシーさんの様子が変だったのです。呼吸がいつもより荒く、立ち止まる回数が多い。高山病か?と思い、引き返した方がいいのか…などと考えながらも進み続け、これはやっぱりおかしいと決定的に思った頃には、もう下りるには怖いところまで来てしまっていました。通常の倍の時間をかけ、ゆっくりゆっくり慎重に登りました。恐らく脱水だったのだろうと思います。酸欠、めまい、呂律が回らなくなる、指先の冷え、吐き気など様々な症状があったようです。そのような症状をはっきり自覚すること、進むか否かの判断、そのタイミング…なかなか難しいと感じました。無事でよかったです。
小屋に着くと、夕食まであと30分。間に合ってよかった。温かいごはんと生ハムのサービスに感謝。ソンシーさんは、永遠にお茶を飲んでいました。お酒はあんまり飲めないようで、やっぱり脱水だったねーと、反省と教訓を話し合いました。
翌朝、朝日は見えませんでしたが、真っ白い景色の向こうから照らされるピンク色を少し楽しみました。赤岳へ向けて歩き始めると、青空も出てきて、心配していた風もほとんど気にならず、実に快適に山頂に到着。360度素晴らしい景色を堪能しました。来てよかった、ソンシーさんの判断に感謝しました。
休憩の度に脱水予防を意識し、慎重に下山しました。